プレスリリースを出して取材につなげる全手順|書き方から記者への送り方まで
- こんな人向け
- 広報の専任者がいない中小企業・店舗で、自社の新サービスや取り組みをメディアに取り上げてほしい人
- 所要時間の目安
- 約90〜120分(リリース本文と送り先リサーチを含む)
- 使う道具
- 各ステップで紹介する無料ツール(すべて登録不要)
プレスリリースは「配信サービスに登録して一斉送信すれば取材が来る」ものではありません。記者の立場で見ると、毎日大量に届くリリースのほとんどは「自社が言いたいこと」だけで、ニュースとして扱える切り口がありません。この記事は、広報担当がいない会社でも、ニュースになる切り口を決め、リリース本文を整え、適切な記者に取材を依頼し、フォローまでするという一連の流れを6ステップで案内します。各ステップで使う無料ツールはすべて登録不要です。
この記事の全体像
STEP1. ニュースになる「切り口」を1つに決める
最初にやるのは本文を書くことではなく、「これはなぜニュースなのか」を1文で言えるようにすることです。記者が記事にできるのは「新しさ」「初めて」「数字」「社会の流れとの関係」「意外性」などがある話です。自社の宣伝したい気持ちを一度脇に置き、第三者が見て興味を持つ切り口を1つに絞ります。
切り口が定まったら、それを短いフレーズに言い表してみます。一言で言えないリリースは、本文も散らかります。タグライン化のツールで複数案を出し、最も「ニュースとして」強いものを選ぶと、このあとの全工程の軸になります。
このステップで使う無料ツール
入力と出力の例
入力例:新サービスの特徴や、業界の中での位置づけを入力
出力イメージ:「業界初」「地域で唯一」「○年連続」など、ニュース性のある短いフレーズが複数案。その中から本文の軸にする1つを選びます。
次のステップへ進む判断基準
- 「なぜ今これがニュースなのか」を、宣伝抜きで1文で言えるか
- その切り口が、自社の都合ではなく読者・社会にとっての関心事になっているか
つまずきやすいポイント
「新サービスを始めました」だけでは切り口になりません。誰にとって・何が初めてで・どんな社会の流れに乗っているのか、までを言えて初めてニュースです。
STEP2. プレスリリース本文を作る
切り口が決まったら本文です。プレスリリースには定型の構成があり、タイトル・リード文・本文・写真や図・問い合わせ先という順番がほぼ決まっています。記者は短時間で大量に判断するため、この型から外れたリリースは読まれずに終わります。
AIで型に沿った下書きを作り、事実関係(日付・数値・固有名詞)を自社の正しい情報に必ず差し替えます。誇張や、確認できていない「業界初」表現は、取材時にかえって信用を失うため使いません。
このステップで使う無料ツール
入力と出力の例
入力例:会社名・発表内容・背景・日付などを入力
出力イメージ:タイトル/リード/本文の構成に沿った下書きが出力。そのまま使わず、固有名詞と数値を正しい情報へ差し替え、誇大表現を削ってから完成とします。
次のステップへ進む判断基準
- タイトルとリード文だけで、何の発表かが伝わるか
- 日付・数値・固有名詞が、すべて確認済みの事実に差し替えられているか
つまずきやすいポイント
AIが生成した「業界初」「日本最大級」などの表現を、裏取りせずそのまま残すのは危険です。事実確認できないアピール表現は削るのが、取材後の信頼を守るうえで重要です。
STEP3. 会社紹介(ボイラープレート)を用意する
リリースの末尾には、会社の基本情報をまとめた短い紹介文(ボイラープレート)を付けます。記者はここを見て「この会社は何者で、取材する価値があるか」を判断します。設立・事業内容・実績・代表者などを、誇張なく簡潔にまとめます。
一度きちんと作れば、今後のリリースすべてで使い回せます。会社紹介文のツールで土台を作り、自社の最新情報に整えておくと、次回以降のリリース作成が大幅に短くなります。
このステップで使う無料ツール
入力と出力の例
入力例:会社名・事業内容・ビジョンなどを入力
出力イメージ:設立背景・事業・展望を簡潔にまとめた紹介文。リリース末尾にそのまま使え、以降のリリースでも共通パーツとして再利用できます。
次のステップへ進む判断基準
- 会社の正体(事業・規模・実績)が、3〜5文で誇張なく伝わるか
- URL・所在地・問い合わせ先など、記者がすぐ連絡できる情報がそろっているか
つまずきやすいポイント
ボイラープレートに問い合わせ先や担当者名がないと、興味を持った記者が連絡できません。「取材したいのに連絡先がない」で機会を逃すのは、最ももったいない失敗です。
STEP4. 送る媒体・記者を選び、取材依頼文を作る
リリースは「どこにでも一斉送信」ではなく、自社の切り口を扱いそうな媒体・記者を選んで送ります。普段からその媒体がどんな記事を書いているかを見て、テーマが合う相手に絞るほど、取材につながる確率が上がります。
そのうえで、リリースに添える取材依頼文(ピッチ)を作ります。これはリリース本文の貼り付けではなく、「なぜあなた(その記者)に送ったか」「読者にとって何が面白いか」を短く伝える個別の手紙です。ここが一斉送信と差がつく最大のポイントです。
このステップで使う無料ツール
入力と出力の例
入力例:送りたい媒体・自社のストーリー・ニュース価値を入力
出力イメージ:媒体に合わせた取材依頼文が出力。リリース本文とは別に、記者個人に宛てた短い導入文として使い、一斉送信との差を作ります。
次のステップへ進む判断基準
- 送り先の媒体・記者が、自社の切り口に近いテーマを実際に扱っているか
- 取材依頼文に「なぜこの記者に送ったか」が1文でも入っているか
つまずきやすいポイント
取材依頼文がリリースのコピペだと、一斉送信と見分けがつかず読まれません。媒体名・記者名・「なぜ送ったか」を一言入れるだけで開封率が変わります。
STEP5. 開封される件名にして送信する
記者の受信箱には1日に何十通もリリースが届きます。本文がよくても、メールの件名で「自社都合の宣伝」と判断されれば開かれません。件名は、STEP1で決めた切り口を、宣伝口調を抜いてニュース見出しのように短くまとめます。
件名メーカーで複数案を出し、最も「記事の見出しっぽい」ものを選びます。会社名や「【プレスリリース】」だけの件名は埋もれます。何のニュースかが件名だけで分かる状態にして送信します。
このステップで使う無料ツール
入力と出力の例
入力例:リリースの切り口・対象読者・目的を入力
出力イメージ:ニュース見出し風の件名が複数案。「【お知らせ】弊社の新サービスについて」ではなく、内容が一目で分かる件名を選んで送信します。
次のステップへ進む判断基準
- 件名だけで「何のニュースか」が伝わるか
- 宣伝口調・過度な記号・煽りが入っていないか
つまずきやすいポイント
件名を「【プレスリリース】株式会社○○」だけにすると、内容が分からず後回しにされます。件名は本文と同じくらい時間をかける価値があります。
STEP6. 反応がなければ一度だけフォローする
送って数日たっても反応がないのは普通です。記者は多忙で、見落としや後回しも頻繁にあります。送信から3〜5営業日後を目安に、フォローのメールを一度だけ送ります。何度も催促すると逆効果になるため、フォローは原則1回までです。
フォローメールは、最初のリリースに「補足できる情報」を1つ添えると効果的です。追加データ、写真、取材できる人の都合など、記者の手間を減らす情報を渡します。それでも反応がなければ、その媒体は今回は縁がなかったと割り切り、STEP1の切り口やSTEP4の送り先を見直して次に進みます。
このステップで使う無料ツール
入力と出力の例
入力例:最初の送信状況・追加で渡せる情報を入力
出力イメージ:催促ではなく「補足情報のご案内」というトーンのフォローメール。追加データや取材可否を添え、記者が判断しやすい形に整えます。
次のステップへ進む判断基準
- フォローは送信から3〜5営業日後、かつ1回までに収めているか
- フォローメールに、記者の手間を減らす「追加情報」が含まれているか
つまずきやすいポイント
フォローを何度も送る、電話で急かす、といった行為は「次から開かない記者」を作ります。1回フォローして反応がなければ、潔く次の媒体・次の切り口に切り替えます。
実際に使ってみて — 正直なところ
このワークフローを実際に進めるうえでの所感・向き不向き・限界を、運営者の立場で正直に書いています。
プレスリリースは「本数を打てば当たる」ものではない、というのが正直なところです。STEP1 の切り口が弱いと、何十通送っても反応はゼロになります。逆に切り口が強ければ、数通でも取材につながります。送る数より、切り口の強さがほぼすべてです。
AI を使えば STEP2 の本文の体裁は短時間で整いますが、それで楽になるのは「書く時間」だけです。本当に時間がかかるのは STEP1 の切り口決めと STEP4 の送り先選びで、ここは AI に丸投げできません。
向いている人
- 広報の専任者がいない中小企業・店舗
- 新サービス・周年・地域での取り組みなど、発表できる具体的な「出来事」がある人
向いていない人・別の手段がよい人
- 発表できる具体的な出来事がなく「会社を知ってほしい」だけの段階の人(それはプレスリリースではなく別の手段が向きます)
- 1 回の発信で大きな成果を期待する人(広報は積み重ねで効いてくる活動です)
このやり方の限界・注意点
- STEP2 で AI が生成する本文には「業界初」「最大級」など、裏取りできない表現が混じることがあります。必ず削るか、事実を確認してから使ってください。
- このワークフローは配信サービスを使わず、記者に直接送る前提です。大量一斉配信のやり方はカバーしていません。
- 取材につながるかは切り口と媒体の相性に左右され、「これをやれば必ず取材が来る」という確実な方法は存在しません。
仕上げ・次にやること
プレスリリースの成果は「配信した数」ではなく「切り口の強さ × 送り先の精度」で決まります。STEP1の切り口とSTEP4の送り先を丁寧にやれば、少ない通数でも取材につながります。
一度の発信で取材が来なくても失敗ではありません。どの切り口・どの媒体が反応したかを記録し、次のリリースに反映していくと、回を重ねるごとに精度が上がります。広報は単発のイベントではなく、続けることで効いてくる活動です。
さらに詳しく知るための関連ガイド
よくある質問
- Q. プレスリリース配信サービスは使うべきですか?
- A. この記事のワークフローは、配信サービスを使わずに自社で記者へ直接届けることを前提にしています。配信サービスは到達範囲を広げられる一方、一斉送信のため個別性が薄まります。まずはSTEP4の通り、切り口に合う媒体へ個別に送るやり方で取材獲得の感覚をつかむのがおすすめです。
- Q. 小さな会社でもメディアに取り上げてもらえますか?
- A. 取り上げられます。媒体は会社の規模ではなく「読者にとって面白いか」で判断します。STEP1で社会の流れや地域性とつながる切り口を作れば、規模が小さくても十分にニュースになります。むしろ地域メディアや業界専門媒体は、中小企業の話を歓迎する傾向があります。
- Q. リリースはどのくらいの長さが適切ですか?
- A. A4で1〜2枚程度が目安です。記者は短時間で判断するため、長すぎると読まれません。STEP2の型(タイトル・リード・本文・問い合わせ先)に沿って、要点を絞ります。詳細データは別添や「取材で説明します」に回し、本文は核心だけにします。
- Q. 取材依頼文とプレスリリース本文は何が違いますか?
- A. プレスリリース本文は「発表内容そのもの」、取材依頼文(STEP4)は「なぜあなたに送ったか・なぜ読者に面白いか」を伝える個別の手紙です。本文をコピペしただけでは一斉送信と見分けがつきません。両方をセットで用意するのがこのワークフローの要点です。
- Q. 送ってから取材が来るまで、どのくらいかかりますか?
- A. 媒体や時期によって幅があり、数日で連絡が来ることも、まったく反応がないこともあります。STEP6の通りフォローは1回まで。反応がなければ縁がなかったと割り切り、切り口や送り先を見直して次の発信に進むのが健全です。